外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
とにかく、奏介に連絡を……!
手に提げていた巾着からスマホを取り出す私を見て、牧野晴彦がハッと息をのんだ。


「旦那に電話する気か!? ダメだ、よこせ!!」

「あっ……!!」


突然ヌッと腕が伸びてきて、私は咄嗟に身を捩って逃げた。
彼の手は宙を掠め、私もよろけながら二歩後退する。
牧野が忌々しげに顔を歪め、チッと舌打ちするのを見て、なにか冷たいものがゾクッと背筋を走った。
一瞬にして湧き上がった悪寒で、頭にまでゾワッと鳥肌が立つのがわかる。


「女の分際で邪魔するな、お前の旦那を法廷に立たせるわけにはいかないんだよ、こっちはっ!!」


さっきまでの冴えない印象を一変させ、牧野はギラギラと獣のような目で私を睨めつける。
彼が自ら口にした『目的』に、『やっぱり!』と思う間はなかった。
牧野は懐からなにかを取り出した。
この薄暗い裏庭でも、彼の手元がギラリと光るのがわかる。
折り畳みナイフだと気付き、私は足を竦ませた。


「お前に危害を与えるのは、最後の手段だと思っていた。しかし已むを得ん。大事な妻が重傷となれば、周防弁護士も呑気に法廷になんぞ立てないだろうからな」


牧野は裸足で土を踏み、私ににじり寄ってくる。
彼の手のナイフがどう動くのかわからず怖くて、私はそこから一瞬たりとも目が離せない。
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