外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
奏介から身体を離してみて、私はひゅっと喉を鳴らして息を吸った。
彼が纏っている若草色の着物。
右の袖は、袂が無残にも削ぎ落とされていた。
切れた袂は、土の地面の上に落ちている。


そして、奏介の着物をそんな風にした人物……牧野は、彼の背中の向こうでナイフを構えたまま、ぶるぶると震えていた。
私と目が合った途端、牧野が我に返ったように目に力を込めたのがわかる。
けれど、彼が再びナイフを振り上げるより早く……。


「刑務所生活になりたくなければ、諦めろ」


奏介が私を背に隠し、低い声で言いながらその場に立ち上がった。
彼の身体で遮られて見えないけれど、牧野が息をのんだ気配は感じられた。


「ナイフを、捨てろ」


静かに奏介が畳みかける。
彼の横から視線を覗かせると、牧野は固まっているようで、ナイフを捨てることもできずにいる。


奏介が「ちっ」と舌打ちをして、怯むことなく大股で歩を進めた。
そして、私が『あっ!』と声をあげる間もなく、牧野の手を打ち、ナイフを地面に落とした。


咄嗟に拾おうとしてしゃがみ込んだ牧野の前で、奏介がそのナイフを草履で踏みしめる。
私の目にも、がっくりとこうべを垂れる牧野の姿が、しっかりと確認できた。


「……畜生」


牧野が両手を土に突き、ギュッと握りしめながら、絞り出すような声を漏らした。
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