外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
「どうして、ダメ?」


奏介は拗ねたような声で呟き、私を覗き込んだ。
身を反らして距離を保とうとする私の背に腕を回し、ググッと乗り出してくる。


「俺も七瀬も疲れを心配しなくていいのなら、今夜は久しぶりに、夫婦水入らずで過ごせる夜だというのに」


ボヤくように繰り出されるのは、なんとも甘い誘惑。
私はさらに仰け反って、ほとんど奏介の腕に支えられている状態になりながら、押し寄せる熱情と現実の理性の狭間で、せめぎ合った。


「ま、まだ全部片付いてない。奏介の裁判、まだ結審してないし」

「今日の法廷、君も見ていただろう? 七瀬。牧野が俺に対する業務妨害で逮捕されたと報告があってから、原告側、もう裁判どころじゃないほど慌てふためいていた」

「それは、確かに……」

「業務妨害だけじゃない。七瀬、君への殺人未遂の罪状もある。刑事事件に発展してしまっては、結審を待たずに、上告を取り下げてくるんじゃないかな」


俺たちの勝ちだ、と奏介はふてぶてしいほど強気に言いのける。
私の胸はドキドキと音を立てて加速する中で、きゅんと疼いてしまう。
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