外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
奏介の言う通り。
今日の上告審で、開廷から三十分経った頃、原告・被告側双方に、牧野の逮捕が伝えられた。
それを知った原告企業は動揺を隠せず、落ち着きを失ってしまった。
弁護人も我を失い、弁論までも精彩を欠いた。
閉廷の木槌を聞くなり、ほとんど逃げるように退廷してしまったのだ。


「どちらにしても、来週にはまた、七瀬が『お祝いだ』って手料理でもてなしてくれる夜を迎える。少し早まるだけだ。もういいだろ、今度こそいちゃいちゃさせろ」

「で、でも」


私の身体は完全に傾き、結局ソファに背を横たえてしまった。
奏介が私の顔の横に片方の肘をつき、至近距離から私を見つめている。


「わ、私。明日も明後日もお茶会のお手伝いが、まだ……」


ボソボソと唇の先で呟きながら、視線をつーっと横に流して逃げた。


そう、私は明日も、早朝からお手伝いなのだ。
奏介には家でゆっくりしてもらっても、私はまた周防家に行かなければ。
けれど、奏介がどこか得意げに、ふっと眉尻を上げた。


「安心しろ。明日、明後日の手伝いはナシだ」

「っ、え?」


予想もしなかった言葉が降ってきて、私はギョッとして奏介に視線を戻した。
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