外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
だけど。


「ごめんね。今日、約束してて」


私がニッコリ笑って返事をすると、彼女は一瞬虚を衝かれたように、目を丸めて瞬きをした。


「え? 誰と?」

「旦那様と」


即答すると、他の同僚も「えっ!?」と声をあげた。


「上条さん! ってことは、『和装弁護士』がここに来るってことじゃあ!?」


お昼前で、受付にもお客様が少ない時間だからか、一気にみんながわっと寄ってくる。


「う、えっと……」


みんなのテンションに腰を引いて、私が怯んだ時。


「七瀬」


わりと近くで、低い声が聞こえた。
私が振り返る前に、取り囲んでいた同僚たちの目線が上を向き、押し殺したような黄色い歓声が沸き上がる。


「すまない。ちょっと早かったか? 手が空いたものだから」


約束の時間より、五分早い。
奏介は同僚たちの反応に、戸惑った表情を浮かべた。


「あ……ごめんなさい。ちょっとだけ待って」


慌てて休憩に入る準備を始める私をよそに、同僚たちが我先にと奏介に近付いていく。


「周防さん! ニュース見ました! 勝訴、おめでとうございます!」

「え? ああ……ありがとうございます」

「和服の弁護士さんなんて素敵! また着物で法廷に立つことはないんですか!?」
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