外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
受付の女性たちに取り囲まれ、矢継ぎ早に質問を畳みかけられる奏介が、完全に怯んでいる。
それを横目に、私は急いで荷物を手に取り……。


「お待たせ、奏介! 行こう!」


同僚たちを掻き分けて奏介の前に出ると、彼の腕をグッと掴んで駆け出した。


「あ、おい、七瀬っ……」


突然走り出す格好になった奏介が、わずかに上擦った声をあげる。
それに構わず正面玄関から外の通りに出て、私はようやく「ふうっ」と大きな息をついた。


「七瀬」


いきなりダッシュする羽目になり、私より奏介の方が息を弾ませている。
それを見て腕を離し、「ごめんなさい」と肩を竦めた。


「まあ、いいが。……なんだ、君の同僚たちの、あのテンションは」


奏介は眉間に皺を寄せ、多分無意識にネクタイを緩めながら、私に訊ねてくる。


「あの……みんな、例の最高裁のニュース、見てたみたいで」

「ああ……」

「『和装弁護士』って、アイドルなんです。奏介が、また着物で法廷に立つ時は、教えてほしい、とも……」

「ない」


ちょっと躊躇いながら答えた私に、奏介は短く即答して、今度はさっさと先に歩き始めた。


「あ、待って、奏介!」


私は慌てて声をひっくり返らせながら、小走りで隣に追いつく。
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