外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
私がオフィスから持ってきたトートバッグには、擦り切れるほど読み尽くした旅行会社のパンフレットが入っている。
無意識に、足取りが弾んでしまう。
浮足立つのを必死に堪えながら、私はそっと彼を見上げた。


「奏介、どこがいい?」

「いちゃいちゃできるところ。前に言ったろ?」


即座に返ってくる答えには、はは、と苦笑を重ねた。


「あれ、本気で言ってたの」

「本気に決まってるだろ。俺は今この瞬間だって、七瀬といちゃいちゃしたい」

「っ……」


あまりにもサラッと言いのけられて、私は言葉に詰まってしまった。
思わず足を止めて、カッと火照った頬に手を当てる。
一歩先に出た奏介が私を振り返り、ニヤッと笑った。


「まあ……今はこれが限度だな」


そう言って、私の手を引く。
すぐに指を絡めて繋がれて、私の胸がドキンと大きく跳ね上がった。


真昼間、オフィス街のど真ん中なのに……!
表情も変えずにしでかしてくる奏介に、胸の鼓動は高鳴るばかり。
奏介は、私の反応を一から十まで確認して、小さく吹き出した。


「七瀬、胸を張れ。安心しろ、それほど周りは他人を見ちゃいない」


どこかふてぶてしく言って、言葉通り堂々と胸を張って先を歩かれると、恥ずかしがってる私の方が目立ってしまう、そんな気がしてくる。
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