外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
「このままじゃ、お茶会に呼ばれる度に、奏介が行かなきゃいけなくなる。私じゃ、奏介を休ませてあげるどころか、足手纏いにしかならない……」


がっくりとこうべを垂れ、落ち込む私の頭を、奏介がハンドルから離した手でポンと叩いた。


「俺は大丈夫だよ。それに、毎回茶会に出席する義務はない」

「それだけじゃない。今後を考えても、やっぱり、なにも知らないままじゃ、あまりに情けない」


追い詰められた気分で、いじけてブツブツと呟く私に、さすがに奏介も呆れた様子で、小さく溜め息をつくのが聞こえた。


確かに私、今まで『和』というものにまともに触れることはなかった。
好きになって結婚した人が、たまたま茶道の家元の生まれだっただけ、といっても、これだって縁だ。


奏介との出会いは偶然だけど、今となっては私の人生の中で一番大事な運命なのだ。
生まれて初めて『和』に触れる機会を得たことも、大事な出会いだということに違いはない。


そう言えば、帰り際、お義母さんが『六月の終わりに、今度は大衆向けのお茶会があるから、ぜひ』って言ってくれたっけ。
後一ヵ月。せめてその時には、今日の失態の挽回を……!


「奏介、お願い。家に帰ったら、少しの時間でいいから、お作法教えて!」

「えっ!?」
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