外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
結局、新婚らしい生活が始まらないまま週明けを迎えて、私は普段通り業務に就いているというわけだ。


「旦那さん……同じビルに勤めてるっていうのに。気の毒にとしか言えないすれ違いっぷりだねえ」


事情を聞いたなつみが、同情を交えて苦笑を浮かべた。
それには、私も深い溜め息を漏らしてしまう。


「裁判は終わったばかりなのに。なにかあったのかなあ……」


もしかして、またすぐ別の裁判を担当することが決まったんだろうか。
そう考えると、私の気分も沈んでしまう。


一度弁護を引き受けると、奏介はいつも以上に多忙を極め、仕事にかかりっきりになる。
結婚式を延期せざるを得なかった経緯を思い出すと、憂鬱な溜め息しか出てこない。


「はあ……」


テーブルに頬杖をつき、目線をテーブルに伏せた。
意味もなくおしぼりをくるくると巻いていると、店員さんがランチのトレーを二つ運んできてくれた。
ちょうどよく会話が中断されて、私もぼんやりと思考を巡らせた。


結婚する前は、忙しくてなかなか会えない奏介への不満を、入籍後の新婚生活を思い描くことで紛らわせることができた。
今度はどうやって気持ちを切り替えればいいのだろう。
新婚早々新居に放置された日々が、まだ続くかと思うと、さすがに滅入ってしまう。
奏介の身体も心配だし、それに……。


「お茶のお作法……どころじゃないな」


これからの生活に思いを馳せていたら、忘れていたかった重圧に辿り着いてしまった。
< 43 / 226 >

この作品をシェア

pagetop