外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
ランチを終えて再び午後の業務に就くと、すぐに総合受付の電話が鳴った。
短い電子音が続く呼び出し音は、ビルの館内からの内線電話だ。


「はい。総合受付、上条(かみじょう)です」


仕事は旧姓のまま続けている。
もちろん、まだまだ『周防』と名乗るよりもしっくりくる。
すると。


『お世話になっております。浅倉総合法律事務所の周防と申します』

「っ、奏……」


私にはまだ言い慣れない名字を流暢に告げたその声に、思わず呼びかけそうになり、慌てて口を手で押さえた。
そんな気配が伝わってしまったのだろう。
電話越しに、クスッと笑う小さな声が聞こえてくる。


『七瀬?』


周りを憚った様子で、耳に心地よい小さく低めた声で呼ばれて、ドキンと胸が跳ね上がる。


「は、はい。お世話になっております」


なつみや他の同僚、来客の目を気にして、私は急いで取り繕って挨拶を返した。


『君が出てくれてよかった。……昨夜、帰れなくてすまなかった』


さらに続く奏介の声に、胸をきゅんと疼かせながら、私は小さく「うん」と頷いた。


『早速本題だが、ビルの共有応接会議室の使用申請をしたい。人数は六人。午後二時から二時間。急で悪いが、どこか空いてないか?』
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