外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
奏介の声に少し張りが出たのは、仕事の用件で周りの耳を気にせず済むからだろう。
私相手でもきびきびとビジネストークを繰り出してくる。


「あ、はい。ただいまお調べしますね」


私の方までビシッと背筋が伸びる気分で、PHSを手にしたまま、後方のパソコンに移動した。
このビルのテナント企業は、それぞれ自社の応接室を所有しているけれど、ビルの勤務者専用のラウンジに、幾つか共有の応接会議室を備えてある。
急な会議だったり来客だったりで、自社の応接室が手配できない時など、こういった利用申請がある。


でも、私の記憶にある限り、奏介の事務所から申請されるのはかなり稀なことだ。
昨夜の緊急呼び出しの後だし、なにかトラブルでもあったのだろうか、と一抹の不安を胸に過ぎらせながら、私は会議室の空き状況を確認した。


「あ、大丈夫です。午後二時から二時間、第三応接会議室のご用意ができます」


奏介の希望通りに押さえられることにホッとして、私の返事はちょっと上擦ってしまった。


『そうか、よかった。助かる』


私につられたのか、奏介の返事も強い安堵感が交じったものだった。
だからこそ、やっぱり緊急事態なのかと心配になり、私はふっと眉間を曇らせた。
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