外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
そして、受付カウンターで接客をする同僚を肩越しに気にしながら、コソッと小声で訊ねる。


「あの、鍵……そちらにお届けしましょうか?」

『え?』


私の申し出に、奏介の短い声に少し戸惑った様子が感じられた。


『使用の際は、こちらから受付まで鍵を借りに行くと聞いたんだが……』

「あ。そう、なんですけど」


確かに、利用規定にはそう書かれている。
それなのに、私が余計な気を利かせたのは、そうした方が少しでも奏介と話すことができるかも、なんて考えてしまったせいだ。
どう誤魔化そう、と口ごもると、奏介が小さく笑ったのがわかる。


『大丈夫。こちらから受け取りに行くよ。十分前……で問題ないか?』

「は、はい。ご用意して、お待ちしております」


邪なことを考えていたの、見透かされてしまったかな……。
さすがにちょっと恥ずかしい。
奏介には見えないとわかっていても、つい頭を下げながら電話を切り、私はふうっと声に出して息を吐いた。


そして奏介は宣言通り、予約時間の十分前に、総合受付カウンターにやって来た。
エレベーターホールから颯爽と歩いてくる姿をいち早く見つけて、私の胸はドキドキと弾んでしまった。
奏介もすぐに私に目を留めて、迷う様子もなくまっすぐに向かってくる。
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