外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
「お疲れ様です。お電話しました周防です」


彼はカウンター越しに私の前でピタリと立ち止まり、礼儀正しく挨拶をしてくれた。
その声が聞こえたのか、私の並びの同僚たちが反応して、『え?』と聞き耳を立てるのがわかる。


「は、はい。お待ちしておりました。鍵のご用意、できております」


一応仕事で顔を合わせている以上、事務的な対応は当然のこと。
なのに、同僚はみんな、私が応対しているのが旦那様だとわかっているから、遠慮なく冷やかし交じりの視線をぶつけてくる。


恥ずかしさのあまり頬が火照り、まっすぐ奏介を見ることができず、伏し目がちになってしまう。
奏介の方はそんな私や同僚を気にする様子もなく、「ありがとう」と鍵を受け取った。
そのまま立ち去るものかと、私は静かに頭を下げた。
ところが……。


「……七瀬」


彼の方もわずかに身を屈めて、コソッと小声で私を呼んだ。
下を向いたままの私に影が降り、ドキッと心臓が跳ね上がる。


「ちょっと遅くなるが、今夜はちゃんと帰れるから」

「っ……」

「仕事中に、すまない」


早口で告げられた用件に思わず息をのんでいる間に、奏介はスッと姿勢を正したようだ。
彼の影が消え、私はゴクッと喉を鳴らしてからそおっと顔を上げる。
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