外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
奏介が足早にエレベーターホールに戻っていく背中が、私の目に映った。
こっそりと交わした秘密のやり取りは、ほんのわずかな時間だったのに、私の胸の鼓動はドキドキと高鳴ってしまった。
無意識に胸に手を当て、服を握りしめてしまう。


「……カッコいい人だね~。上条さんの旦那様」


少し遠巻きで私たちを眺めていた先輩が、わかりやすく冷やかし口調で近付いてきた。
それには、顔が赤くなるのを隠し切れない。


「え、と……ありがとうございます……?」


素直にお礼を言うのも、『惚気てる』と怒られそう。
私は微妙に語尾を尻上がりにして、ぎこちなく返した。
そんな私を、なつみが横目で見ながら笑っている。


「たまたま拾った入館証で、あんなエリートイケメン弁護士ゲットするんだから、七瀬もラッキーだったよね」

「はは……」


仕事中だというのに、吊し上げにあってる気分で、私は変な汗を掻きそうになる。
なんとか笑って誤魔化し、そそくさと仕事に戻りながら……。


もう一度、奏介の背を探してエレベーターホールを横目で見遣る。
そこにもう奏介の姿はなかったけれど、なつみに言われた偶然のラッキーを、ついつい脳裏に蘇らせてしまった。
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