外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
今から半年と少し前――。
奏介との出会いは、秋が深まり始めた頃だった。


出勤ラッシュが治まり、総合エントランスを行き交う人も減り、フロア全体の見晴らしがよくなった頃、私は入館証が落ちているのを見つけた。
ビルのセキュリティを通過するために必要で、このビルの勤務者全員に貸与されている物だ。
管理番号を照合すれば、どこの会社の誰の物かは調べられる。


『浅倉総合法律事務所・アソシエイト弁護士・周防奏介』
受付で調べられたのはそこまで。


『弁護士』という職業は、超エリート、私には雲の上の人がなるものという先入観があった。
そのせいで、私はちょっと怯みながら、彼の事務所の総務部に電話をした。
そこから本人に転送してもらったけれど、代理で応答してくれた事務員に、『法廷に出ていて不在です』と言われてしまった。


必然的に、次にビルに入る時に、セキュリティを通れずに困るだろうと判断した。
だから私は、事務員に奏介への連絡をお願いした。


『総合受付でお預かりしておきますので、お戻りの際にお声かけくださいと、お伝えいただけませんか。本日でしたら、私、上条が対応致しますので』


事務員は、『携帯に連絡しておきます』と言ってくれた。
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