外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
でも、その食事の席で、奏介はとても恥ずかしそうに、誘ってくれた時のことを白状した。


『職業柄、言葉を紡ぐのは慣れてるんだが、実は激しく緊張していたんだ。受付に立つ君の姿は、以前から何度も見かけたことがあって。可愛い人だなって思ってたから』


照れた様子で目の下を赤く染めてそう言われて、私の方は驚きで大きく目を見開いてしまった。
私と接したことはなくても、奏介のお客様が『総合受付の上条』の接客態度を高く評価してくれていたそうで、彼らが噂するのを何度も耳にしていたそうだ。


『俺の客から評判のいい受付嬢の『上条さん』が、以前から可愛いと思っていた君だと知って、息が止まるかと思った。これは、知り合いになるチャンスなんじゃないかって、あの時俺の心臓はバクバクだった』


照れ隠しのように、微かに目尻を下げたはにかんだ笑顔を、その時初めて見た。
先に頬を染めたのは奏介なのに、彼の言葉の最後には、私の方が、火を噴きそうなくらい真っ赤な顔をしていた。
そして、その日の帰り道。


『またお誘いしていいですか?』


強引ではないのに、ストレートにグイグイ踏み込んでくる彼に、私の胸はどうしようもなくきゅんとした。
鼓動は弾み、浮き足立って踊った。
もちろん、断りはしなかった。
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