外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
『こんばんは。突然訪ねて申し訳ない。七瀬さん、藤悟です』


もちろん、名乗られなくてもモニターに映るその姿で、藤悟さんなのはわかっている。


「こんばんは。今開けますね」


突然の訪問の理由がわからず困惑しながらも、ボタンを押してオートロックを解除した。
私と奏介の部屋は、タワーマンションの二十階にある。
玄関のインターホンが鳴らされたのは、それから二分ほど経ってからだった。
ドアの向こうに立った藤悟さんは、インターホン越しに交わした挨拶を繰り返し、ニコッと笑った。


「土曜日のお礼に来たんだ。俺も忙しくて出先の帰りで。遅い時間になってしまい、申し訳ない」


お茶会で見た和服の正装・袴姿とは違い、スラックスと白シャツ、ジャケット。
スタイリッシュな印象の藤悟さんに、私は恐縮して首を横に振った。


「そんな。わざわざご丁寧にすみません。……あの、よろしければ中にどうぞ。お茶淹れますので」


高級洋菓子店の菓子折りを受け取って、私はドアを少し広く開いてそう言った。
藤悟さんも「そう?」と軽い調子で小首を傾げて、私の前を通って玄関に入る。
それを見てドアを閉め、藤悟さんの足元にスリッパを出した。
彼の横を擦り抜けて先に廊下に上がり、リビングに案内しようとする。
けれど、


「あれ」


藤悟さんが呟いた一言を耳に留めて、そっと振り返った。
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