外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
「七瀬さん。もしかして、奏介まだ帰ってない?」

「え? あ、はい」


私の返事を聞いて、藤悟さんがきょとんとした様子で目を丸くする。
彼の反応に、私の方が首を傾げた。


「あの。奏介、ちょっと遅くなるって言っていたので。奏介になにかご用でしたら、お伝えしますけど」

「……いや。奏介にはご用もなにもないんだけど」


藤悟さんは目を伏せてそう言って、くくっと声を漏らして笑った。


「なかなか無防備だな。……いいの?」

「え?」

「まあいいか。お邪魔します」


藤悟さんは靴を脱いでスリッパに足を滑らせ、廊下に立った。


「あ、どうぞ、こちらに」


私は気を取り直して先に進み、藤悟さんをリビングに招く。


「へえ~……随分立派なリビングだな。さすが弁護士先生」


藤悟さんはドア口からリビングを大きく見渡し、感嘆したような声をあげた。
唇をすぼめて、『ひゅ~っ』と小さな口笛を吹く。


「ふふ。ありがとうございます」


私もこのリビングはとても気に入っている。
私たちの新居は2フロア使いのメゾネットタイプで、三十畳ほどの広々としたリビングは、吹き抜けになっている。
二階の廊下と同じ高さにある大きな窓からは、昼は明るい日光が射し込み、夜は月明かりが降り注ぐ。
< 58 / 226 >

この作品をシェア

pagetop