外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
リビングに置かれている家具は、全部奏介と二人で選んで購入した上等な物ばかり。
だから、藤悟さんが誉めてくれて、素直に気分がいい。


「藤悟さん、どうぞソファに。私、お茶淹れてきますね」


無意識に顔を綻ばせながら、私はカウンターの向こうのキッチンに入る。


「あ。コーヒーがいいですか? それとも紅茶? 日本茶は緑茶しかなくてお抹茶はちょっと……」

「いやいやいや。プライベートでは普通がいい。そうだな、紅茶もらえる?」

「はい」


藤悟さんが苦笑交じりに返してくるのを聞いて、私も思わずクスッと笑った。
紅茶なら、ちょうど戴き物のいい茶葉があった。
お茶請けのお菓子と一緒にトレーに乗せて、私はいそいそとソファに向かった。


藤悟さんは黒い革張りのソファのやや右寄りに座り、顎を上に向けてまだリビングを眺めていた。
そんな様子にクスクス笑いながら、私はソファの前のテーブルにトレーを置いた。


「どうぞ」

「ありがとう。……なんか、絵に描いたような幸せな新婚生活って感じだね。しかもそれが我が弟のものだと思うと、羨ましいを通り越して妬ましいくらいだ」

「……ほんと、なにからなにまで、私にはもったいないくらい」


藤悟さんにはなんの気もなかっただろうけど、『絵に描いたような幸せ』という言葉が身に沁みて、私の笑みはぎこちなく歪んだ。
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