外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
その夜も私は家で一人で食事を済ませ、午後九時になるまで奏介の帰宅を待っていた。
リビングの壁時計の短針が『9』を少し過ぎるのを見て小さな溜め息をつき、ソファの上で膝を抱えていた腕を解く。


八時を過ぎた時、奏介にLINEを送っておいた。
『今夜は夕食どうしますか?』と帰宅時間を伺ったメッセージは、いまだ既読にもなっていない。
私は溜め息をついてソファから立ち上がり、先にお風呂に入ることにした。


その前に、カウンターを回り込んでキッチンに入り、奏介のために用意しておいた夕食をラップに包む。
私がお風呂に入っている間に奏介が帰ってきても、こうしておけば、レンジで温めてすぐに食べられると思ったからだ。


たっぷり張った湯船に身体を沈めて、三十分で入浴を終え、全身ホコホコになってリビングに戻る。
肩にかかる長さの髪を軽くタオルドライしながら、無意識にテレビのリモコンを操作した。
特に見たい番組もなく、点いたチャンネルのままにしてソファに向かう。
どうやらニュース番組だったようで、アナウンサーの妙に堅い声が耳に届いた。


『北国(ほっこく)電子産業による、親会社への特許侵害訴訟の続報です』


私はソファの上に置き去りにしていたスマホを手に取り、中腰の姿勢でピタリと動きを止めた。
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