外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
次の瞬間、反射的に背を起こして、大きくテレビを振り返った。


画面いっぱいに映っていた女性アナウンサーから、映像が切り替わる。
先週訪れたばかりで、まだ記憶に新しい裁判所の建物が映し出された。


『先週末に行われた控訴審は、原告敗訴の判決が下されました。北国電子産業はこれを不服とし、本日、最高裁への上告に踏み切ったことを発表いたしました』


私はテレビの目の前まで、無意識に歩を進めていた。
髪を拭っていたタオルで口元を覆い、ごくりと喉を鳴らしてしまう。


間違いなく、奏介が担当している裁判だ。
昨夜彼が言っていた通り、本当に最高裁で争うことになったんだ……。


『そこまで持ち込もうとするくらいだから、勝算あってのことだろう。こちらも、全力で防衛しなければならない』


そう言って、厳しい表情を浮かべた奏介を、私は胸に思い描いた。
そして、ハッとしてスマホに視線を落とす。


そこには、お風呂に入る前に確認した時にはなかった留守電の通知が表示されていた。
着信は、ほんの十分前。
それが奏介からだったから、私は居ても立ってもいられず、留守電を確認しないままリダイヤルした。
無機質な電子音が二回続き、電話はすぐに繋がった。
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