外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
「もしもし、奏介……!?」


彼の応答を待たずに、勢い込んで呼びかけてしまう。
すぐに、『七瀬』と奏介の声が返ってきた。
彼の声を耳にしただけでホッとして、私はその場にペタンと座り込んだ。


「奏介、裁判……ニュースで」


気が急いた私が口にしたのは、単語を羅列しただけでまるで文章になっていなかった。
テレビに目を遣ると、画面に映ったアナウンサーは、すでに別のニュース原稿を読み上げている。


『見たのか』


奏介の短い問いかけに、見えないとわかっていても、何度も首を横に振ってしまう。
声に出すことはできなかったのに、奏介には伝わったのか、小さな吐息が耳をくすぐった。


『昨夜言った通り、最高裁で争うことになった。上告審の日程は来月下旬と通告されている』


ちょっと疲れが滲む声。
それでもきびきびと淀みない口調で、私の耳には力強く響いた。
私は唇を噛み、耳に当てたスマホを両手でギュッと握りしめる。


『……七瀬、すまない。今夜はちょっと帰れそうにない。夕食、無駄にさせてしまったか?』


帰れずに事務所に泊まり込みになるくらいだから、私が思う以上に大変なのはわかっている。
なのに奏介は、私のことを気遣って申し訳なさそうに言う。
私は思いっきり首を横に振った。
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