外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
ところが……。
翌日も奏介は泊まり込みで、木曜日の夜、週末は地方出張になってしまったと、電話で告げられた。


『日曜の夜には帰れるから』と申し訳なさそうに謝る奏介に、『私は大丈夫。気をつけて』と言って、電話を終えた。
とは言え、奏介と繋がる電波を切った途端、がっくりと肩から力が抜けるのを感じた。


彼が帰ってきてくれることを願って、週末の予定はなにも考えていなかった。
無意識に漏れてしまう溜め息を抑えられないまま、広い天井を仰ぐ。


意識して照明を落としているため、高い位置にある大きな窓から、月明かりが降ってくる。
それほど眩しくもないのに、私はふっと目を閉じた。


奏介が帰ってこないのに、週末、一人ぼっちでマンションで過ごす。
考えるだけで憂鬱で、気持ちがどんよりと沈んでいく。


再びゆっくり目を開けて、薄暗いリビングを見渡す。
藤悟さんも絶賛してくれた、私もお気に入りのこの空間。
褒めてもらった時、あんなに嬉しくて気分がよかったのに、今、この広さが落ち着かない。


奏介はきっと、知らないだろうな。
一人でいると、このリビングは広すぎて、寂しくて息が苦しくなることを――。


奏介との幸せな空間で溜め息を重ねてしまう自分が嫌で、私は心のモヤモヤを吹っ切ろうと、一度大きく首を横に振った。
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