外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
論告求刑 彼色に染まる夜
初めてのお茶のお稽古時間は、午後三時から一時間。
訪問時間を伝えてあったからか、私はお手伝いさんにまっすぐ藤悟さんのお茶室に通された。


襖口に立って「ようこそ」と出迎えてくれた藤悟さんは、藤色の着物姿だった。
お茶会で、袴は亭主となる男性の正装だと聞いたけれど、今日は藤悟さんもお仕事ではない休日で、さらりと略式で着流したスタイル。


大事なプライベートの時間を割いてお稽古してくれることに、改めてお礼を言うと、藤悟さんはニッコリと笑ってくれた。


「すぐに始められる準備はしてあるから、まずはお茶の味を知るところから始めようか」


そう言って私を茶室に招き入れてくれた彼が、今、私の斜め前の位置で正座して、優雅な所作でお茶を点てている。
シャッシャッという音を立てて小刻みに動く茶筅に、私はまっすぐ視線を向ける。
茶筅が茶器を擦る音が、どこか厳かで清廉で、とても耳に心地よい。


目の焦点をぶらさず一心に見つめていると、頭の中からいろんなものが削ぎ落とされ、流れていきそうな気分になる。
すっきりとクリアになっていくのにつれて、心の奥までスーッとして、穏やかに凪いでいく。


しなやかな指先に目を細めていると、突如、「どうぞ」と低い声が耳をくすぐった。
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