妖精の涙
「おばあちゃんはもう少し日向ぼっこがしたいんだけどねえ。そうだ、咲穂。少しお話しようか?」
どうしても日向ぼっこを続けたいおばあちゃんは、そう提案した。
「えー? 学校の話はまた今度しようよー」
一方、どうしても外に出たい咲穂は頬を膨らませた。
「おばあちゃんが話すんだよ。この小さな村に伝わる、ちょっとした昔話さ」
「……面白い?」
何を言ってもおばあちゃんは動かないと察したのか、咲穂はおばあちゃんから手を離した。
「それは聞いてから決めてごらん」
咲穂が手を離した、それを聞こうと思っていると捉えたおばあちゃんは、話し始めた。
「時は今から百年ほど前、村を囲んでいた森の桜が散り始めたころのこと。この村には全く雨が降っていなかった──」