妖精の涙
「……深雨(みう)」
少女、深雨は戸惑いながらも、自分の名前を口にした。
「深雨! よろしくね!」
明は勢いよく右手を差し出した。
深雨はゆっくり手を伸ばしていたが、待ちきれなくなったらしく、明がその手を握った。
そして言葉はかけず、ただただ笑っていた。
「それで、深雨はどうしてここに来たの?」
「お父さんとお母さんがいなくて……」
深雨の言葉を聞いた瞬間、二人の周りに村人が集まった。
深雨は怯えて、明の背中に隠れる。