妖精の涙
そのせいか、村人たちの矛先は明に向いた。
それでも明は怯まず、深雨の前を動こうとはしなかった。
「なんだか賑やかですね」
その声がその場にいる全員の耳に届き、さっきまでの罵声が嘘のように消えた。
そして、全員がその声の主のほうを見る。
そこにいたのは、凛とした女性だった。
「あの人は……?」
この状況からして、あの女性が村人よりも力のある人物だと、深雨は察した。
そこで、そっと明に尋ねた。
「村長で、私のお母さん。桜さんって呼んであげてね。村長って言われるの、嫌いみたいだから」
「え……? あ、うん……」