記憶喪失の君と、君だけを忘れてしまった僕
その私の最後の言葉を、お父さんが聞いたかどうかは分からない。ただ私の意識はそこで一度途切れて、真っ暗闇に放り出された。
 でもきっと、ちゃんと伝わったと思う。それはもしかすると、十年後かもしれない。とりあえず、私の気持ちは伝わったと信じよう。
 これから私が向かうのはきっと、墜落する飛行機の中だ。そして何もかもを感じられないまま、死んでいくのだろう。
 それでも、最後にお父さんに想いを伝えられてよかった。お父さんならきっと、夢を叶えることができる。十年後に宛てた私の手紙も読んでくれる。
 きっと、大丈夫だ。
 だって私だけの自慢のお父さんなんだから。
 じゃあ、お父さん。
 元気でね……
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