クールな社長の裏の顔
 ここの社長は若い。


 32歳、独身。


 おまけにルックスはといえば―二重の切れ長の瞳に、高い鼻筋、185センチはある長身に、均等のとれた体格。

 
 どこかのモデルのような華やかな顔立ちをした社長は、高校時代からの友人―三村周弥と二人でこの会社を立ち上げた。



 彩矢はこっそりとパソコンとにらめっこしている社長を盗み見る。



 社長はめったにしゃべらない。


 必要最低限の報告だけして、あとは自分の仕事に没頭する。


 基本社員に自由にやらせている。


 こまかな事柄は、社長の面倒をみているという、周弥が引き受けていた。



 雑用係の彩矢にとって、社長と接することはあまりなく挨拶する程度だ。



(いまだに緊張するのよね)



 社長と二人きりになる機会はほとんどないけれど、たまに二人きりになるとぴりっとした空気に包まれる。


 
 ふいに事務所のインターフォンが鳴って、彩矢は即座に席を立つ。


 扉をあけると、いつも荷物を運んでくる宅急便の人だった。


「こんにちは。お荷物が届いてます」


「ありがとうございます」


 彩矢は段ボール箱を受け取り、印鑑を押す。


 宛名は社長だった。


「社長、UK株式会社からお荷物が届いてます」


「ああ、そこに置いといてくれ」


「わかりました」


 邪魔にならないよう、机の隅に荷物を置いて、彩矢は仕事に戻った。



 昼休み、外で食事をすませ、会社のあるビルに入ろうとしたところで、ふいに声をかけられた。


「すみません」


「はい?」


 振り返ると、スーツ姿の若い男性が小走りにあとを追ってくる。


「あの、なにか?」


 顔は、みたことがある。確か、ここの5階のオフィスで働いている青年だ。


「あ、あの。あの。えっと。突然で驚くかもしれないんですけど、あの、こ、今夜あいてますかっ!?」



「え」


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