クールな社長の裏の顔
　またも恥ずかしいことをさらりと言われて、彩矢は狼狽した。




　 緊張をほどくために勢いよくカクテルを口に含み、息を吐く。




　「酒、強かったっけ？」


　
　「ほどほどにですけど」



　「意外だな」


　

　 ふっと社長が笑ってビールを煽る。




　　一つ一つのしぐさ全てが色香をまとっていて、いちいちドキドキさせられる。





　（今までそういう目でみたことなかったのに……）


　

　もちろん、かっこよくて素敵な人だという想いはあった。


　

　けれど、どうせ彩矢を相手にするわけがないと決めていて、社長を仕事相手の人と決めて接していたのだ。


　


　それなのに、何をどう間違ったのか、社長と二人きりで食事をしているなんて……。





　「緊張してるのか？」




ふ、と小さく笑って言われ、彩矢は戸惑いながらも素直に答える。





　「だって社長と二人きりなんて、部下からしたら誰でも緊張しますよ」


　「部下、ね……」


　


　社長はどこか残念そうに呟いて、じっと彩矢をみつめた。




　「俺は今、君と部下として接してるつもりはない」




　　きっぱりと、そしてなぜか少し怒った口調で言われて彩矢はたじろく。




　「なんとも思ってない女性と飲みには行かないだろう」


　「え。でも。仕事の付き合いかと……」


　「だったら、それこそ他の社員も連れていく」




　　呆れたとでもいうように盛大に嘆息した社長は、ビールを煽ってさらに続けた。




　「……君のことが好きだから誘ったんだ」


　
　

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