黒猫さんの忘れたいこと。
初めまして。
「あれ?やっと来た?」
俺の視線の先を追って、転校生が来たことに気づいた直樹も窓の外を見ている。
ちなみに大輝は寝ている。
「ああ、やっとだ。」
転校初日から遅刻って、馬鹿だろ。
あ、でも、何人かは急いでた奴がいたな。
ま、どっちにしろケンちゃんに怒られるのは決まりだな。
「優希、顔が緩んでるよ。」
直樹が呆れながら言う。
俺はバッと顔を抑える。まじか、緩んでたのか。
恥ずかし。
「本当、楽しみなんだね。」
「当たり前。楽しみでしょうがないよ。」
「あー、怖い怖い。」
怖い怖いって言いながら、笑ってるじゃねーか。
「あ、噂をすれば来たよ。」
教室に転校生が入ってきた。
「おい、お前ら転校初日から遅刻か。」
ケンちゃんが呆れながら言う
「すみません。急いだんですが、うちの馬鹿が朝ごはん食べたいって聞かなくて。」
おお、メガネくん、後ろに黒いのが見えるねー。
「「だって!朝ごはん食べなきゃ、1日やってらんないよ!」」
あ、朝ごはん決めれなくて怒られてた双子か。
「朝ごはん食べなきゃやってられねぇのは分かったけどよ、買うならさっさと決めて欲しかったじゃねぇの。」
ゆるゆるくんか、君も苦労してんだね。
「ほんと、遅刻するなら置いていけばよかった。」
お、毒舌くんだ。
「・・・。」
無口くん、喋らないのか。
「おお、あいつらか。馬鹿そうだな。」
ケンちゃんに殴られていつの間にか起きた大輝が会話に入ってくる。
「いや、お前が言えねぇだろ。」
「ああん?おいコラ優希、てめぇどういう事だ。」
「そのままだろ?大輝って馬鹿そうに見えて、やっぱり馬鹿だよな。」
「ん?喧嘩売られてんだよな?これ。よし、お前の気持ちはよーく分かった。その喧嘩買ってやるよ。とりあえず、表出ろやぁぁあ!!!」
「うるせぇぞ!!!大輝!!!静かにしろや!!」
あ、ケンちゃん怒った。大輝、かわいそ。
あーあ、転校生くん達も、驚いてこっち見て固まってるよー。
「はぁ?!なんで俺だけなんだよ!優希もだろ!?」
「てめぇは声がでけぇんだよ!!俺の声が聞こえねぇんだよ!お前の声で!」
「フッ」
「ぶふっ」
「おい。直樹、笑ったよな?優希にかぎっては、完全に吹き出してたよな?・ ・ ・お前ら、ぶっ潰す。」
「せんせーい、大輝くんがまた騒いでまーす。」
「あ?!優希てめぇふざけんなよ!」
「日野?お前、そんなに俺の邪魔したいのか?」
うわぁー、黒い、真っ黒だよケンちゃん。まっくろくろすけがたくさんいるよ。大魔王もいるね。怖い。
「ちがっ!元はと言えば優希が俺に・・・っ!!」
ビュン!ものすごい速さで何か飛んでいって、そのまま大輝のおでこに直撃した。
うわ、いったそー。何あれ、チョーク?
大輝のおでこに当たったものはチョークだった。
「言い訳すんな。お前、放課後居残りで掃除な。」
「はぁ?!」
「うっわ、かわいそー。どんまい、大輝。」
「優希、お前もだ。」
「ええ!なんで?!俺いい子ちゃんだよ?」
「馬鹿野郎。いい子ちゃんは、遅刻もしないし、先生の話も聞かずに窓の外を眺めたりしねぇんだよ。」
「ちぇっ、ケンちゃんのばぁーか。」
「ゆ、う、き、く、ん?」
「さぁーって、教室ピッカピカにするぞー!今日の放課後は楽しみだなー!」
あっぶねぇ、大輝に続いて俺もチョーク受けるところだった。
「先生、転校生が戸惑ってますよ?」
直樹がそう言うと、ケンちゃんはハッとして、転校生を紹介し始めた。