扉の向こうはいつも雨
 怒らせない方がいいに決まっている。
 けれど、どうしてもまだ聞きたいことがあった。

「あと、もう一つ聞いても?」

「あぁ。なんだい?」

「どうして、一緒に逃げてくれたんですか?」

 面食らったような顔をして、それから笑う。
 こういう時は、柔らかくて優しい雰囲気を纏うのに………。

 額に手を当ててひとしきり笑った宗一郎が隣の桃香ではなく真っ直ぐ前を向いて言った。

「僕の未来は君の未来でもあるんだ。」

 言われる立場と雰囲気が違えば身悶えそうな台詞は、主従関係のどちらが『主』なのかを示された気がした。
 そして……何故だか悲しい色が混じっているような、そんな気がした。

「狼に捕らわれた赤ずきん…ですね。
 ちょっと違うかな。」

 どうしてか和ませたくて変なことを口にした。
 そんな桃香の言葉に苦笑した宗一郎は意味深に呟いた。

「狼……ね。
 そんなに可愛いモノなら良かったよね。」




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