扉の向こうはいつも雨
5.相容れない関係
 優しい温もりに自分が寝ていたことに気づく。
 ベッドのような場所に下ろされて、布団をかけられたみたいだ。

 あの状況で寝られるのは図太いのか、はたまた気絶するように寝てしまった小心者なのか。

 そもそも、どういう態度を取ればいいのか分からなくて寝たふりをすることにした。
 宗一郎はまだ部屋を出て行かない。

 宗一郎の指が桃香の髪に触れ、その髪を耳にかけた。
 その仕草は愛おしいモノを慈しまれている錯覚を覚えた。

「初めてだったのにな。
 僕の……目を見て怖がらない子は。」

 呟いてから、ほどなくして宗一郎は部屋を出ていった。

 しんと静かな部屋は暗いのに、儀式の暗闇のような恐怖は感じなかった。

 僕の目を怖がらない子……。
 だから食べるのを待ってくれた……のかな。

 複雑な感情が渦巻いて、それからまたいつの間にか眠りについていた。





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