扉の向こうはいつも雨
 まばゆい光が差し込む窓辺の緩やかなまどろみの中で目を覚ました。

「生きて……た。」

 よく分からない感想を口にした自分に笑う。
 情けをかけられて気づかぬうちに食べられる。
 そんなのもアリかなと思ったのだ。

 体を起こして辺りを見渡した。
 ベッドと壁際に小さな机と椅子が置かれた部屋は客間のようだった。
 ベッドから色彩の美しい絨毯の上に着地して洗面所はどこかなと扉を開けた。

 部屋の外は廊下を挟んで部屋が1つと右にもう1つ。
 左は明るい広い空間のようで、直感的にそちらが昨日いたリビングなのだろうと思った。

 再び視線を目の前の部屋に移す。
 そして右の部屋と比べるように交互に見た。

 右の奥の部屋は大きそうだ。
 目の前の扉を……開けていいのか迷っているとリビングであろう方向から人影が。

「起きたんだね。
 洗面所は目の前の扉だよ。
 お風呂もそこだから入るのならどうぞ。」

 食べる……つもりはあるのだろうか。

 もし自分だったら汚らしい小娘は食べたくない。
 だからこそ禊をしたんだと思っていたのに………。

 儀式の前には聖なる水で体を清めてから向かう。
 もちろん本儀式の前にも行われた。

 今、綺麗に汚れを落としてしまったら食べられてしまう気もしてお風呂はやめておいた。

 顔を洗って鏡を見る。
 泣いたひどい顔をしているのかと思っていたのに案外いつも通りの顔をしていた。

 そんな自分の顔を見て「なかなか肝の座ったお嬢さんだ」と言われたことを思い出す。
 それだけで頬が緩んでしまうのだから、もしかしたら本儀式の前よりもマシな顔をしているのかもしれない。






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