扉の向こうはいつも雨
 しばらく経った後。
 何か持っていこうかと扉の前をうろうろしている自分に苦笑する。
 宗一郎が言う通り、食べようとしている人を食べられる側の人間が心配するなんておかしい。

 行ったり来たりしていると何やら話し声がした。
 何か2人が話している声が聞こえて、話せるくらい体調が良くなったのだと安堵する。

「………どうするつもりだ。
 本当に食うことになるぞ。」

「あぁ。そうだな。」

『食うことになる。』『あぁ。そうだな。』
 まざまざと突きつけられる自分の立場。

 忘れたわけじゃない恐怖を嫌でも思い出して服をギュッとつかんだ。

 体調がまだ辛そうな掠れた宗一郎の声が続いた。

「いつかは食べるだろうな。」

 そうだよね。当たり前だ。
 自分から食べればいいと言ったくせに。
 何に対してショックを受けているんだろう。

 それでもこれ以上は聞くことが出来なくて部屋の前から逃げるように離れた。



 塚田という医師が帰った後、いつの間にか眠っていた。

 与えられた部屋でただうずくまるように小さく体を縮こませて。





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