扉の向こうはいつも雨
 宗一郎はリビングにいなかった。
 部屋に籠っているようだ。
 自分が今できるのは待つこと。
 これは我慢比べだ。

 本を何冊も持って宗一郎の部屋の前に陣取った。
 膝掛けを体に巻きつけて何時間でも待てるように。

 一緒に苦しめるのかはまだ分からない。
 まずは一緒にいることからやり直そうと思った。

 恐怖がないわけじゃない。
 ただ宗一郎の顔が頭から離れなかった。
 塚田といた桃香の部屋を開けた宗一郎の悲しそうな顔が。




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