扉の向こうはいつも雨
扉の開く音を聞いて目を開く。
寝ていたのか辺りが冷えていたみたいで身震いをして膝掛けをたぐり寄せた。
「どういうつもり?」
冷たい声に顔を上げると宗一郎が見下ろしていた。
冷ややかな視線は薄暗い中で淡いブルーが際立って全てを見透かされているようだった。
どこまでも澄んだ瞳に見据えられる。
「綺麗………。」
思わず口を出た言葉はひどく宗一郎を傷つけたみたいで後悔した。
傷つけたくて待っていたわけじゃないのに。
「憐れみたくて待ってたわけ?」
「憐れだなんて、そんな。」
扉を挟んで離れた壁にずるずるともたれかかって崩れるように座った宗一郎は頭を抱えて呟くような小さな声がした。
「人喰い人種だなんて。
どこが神の子なんだろうね。」
悲しい声色は桃香に僅かな恐怖と共に胸の痛みを与えた。
何も言えるわけがなくて、宗一郎が続ける。
「僕はひどく滑稽でひどく醜いんだ。」
そんなことない。そう思う気持ちは宗一郎の纏った禍々しい空気に遮られて口から出ることはなかった。
「小さい頃からコンタクトで瞳の色を誤魔化してたんだけどね。
面倒だし慣れないと痛くて。
コンタクトをせずに遊びに行ったことがあるんだ。」
子どもの頃の話はオッドアイとして生まれた宗一郎の苦労話だろう。
少し複雑な心境で聞いた。
「僕の目を見て……気持ち悪いって。
お化けだ、妖怪だって。
子どもの方が正直で真っ直ぐだからね。」
胸が痛みを伴って鼓動を速めた。
それでも話を聞き続けた。
「儀式の時、目隠しをするだろう?」
「え、あ、はい。」
「この子は僕の本当の姿を見たらなんて言うだろうって、ずっと思ってた。」
初めて目にした時は怖かった。
ただ、初めて口を出たのは綺麗という言葉……。
桃香の心を読んだように宗一郎が口を開いた。
「怖がっていたのは知っているよ。
当たり前だよ。食べられる相手だからね。
でも、それなのに綺麗だって桃ちゃんは言ったよね。」
吸い込まれるような瞳。
左右で色が違う瞳は言い伝えで聞いていた以上に怖ろしくて、けれども美しかった。
寝ていたのか辺りが冷えていたみたいで身震いをして膝掛けをたぐり寄せた。
「どういうつもり?」
冷たい声に顔を上げると宗一郎が見下ろしていた。
冷ややかな視線は薄暗い中で淡いブルーが際立って全てを見透かされているようだった。
どこまでも澄んだ瞳に見据えられる。
「綺麗………。」
思わず口を出た言葉はひどく宗一郎を傷つけたみたいで後悔した。
傷つけたくて待っていたわけじゃないのに。
「憐れみたくて待ってたわけ?」
「憐れだなんて、そんな。」
扉を挟んで離れた壁にずるずるともたれかかって崩れるように座った宗一郎は頭を抱えて呟くような小さな声がした。
「人喰い人種だなんて。
どこが神の子なんだろうね。」
悲しい声色は桃香に僅かな恐怖と共に胸の痛みを与えた。
何も言えるわけがなくて、宗一郎が続ける。
「僕はひどく滑稽でひどく醜いんだ。」
そんなことない。そう思う気持ちは宗一郎の纏った禍々しい空気に遮られて口から出ることはなかった。
「小さい頃からコンタクトで瞳の色を誤魔化してたんだけどね。
面倒だし慣れないと痛くて。
コンタクトをせずに遊びに行ったことがあるんだ。」
子どもの頃の話はオッドアイとして生まれた宗一郎の苦労話だろう。
少し複雑な心境で聞いた。
「僕の目を見て……気持ち悪いって。
お化けだ、妖怪だって。
子どもの方が正直で真っ直ぐだからね。」
胸が痛みを伴って鼓動を速めた。
それでも話を聞き続けた。
「儀式の時、目隠しをするだろう?」
「え、あ、はい。」
「この子は僕の本当の姿を見たらなんて言うだろうって、ずっと思ってた。」
初めて目にした時は怖かった。
ただ、初めて口を出たのは綺麗という言葉……。
桃香の心を読んだように宗一郎が口を開いた。
「怖がっていたのは知っているよ。
当たり前だよ。食べられる相手だからね。
でも、それなのに綺麗だって桃ちゃんは言ったよね。」
吸い込まれるような瞳。
左右で色が違う瞳は言い伝えで聞いていた以上に怖ろしくて、けれども美しかった。