扉の向こうはいつも雨
12.伸ばした手
 手を伸ばしてつかもうとしたそれは空をつかんだ。
 届かない距離に心が軋む。

 だからその距離を埋める為に体を起こして宗一郎を捕まえた。
 頭を抱くように腕を回す。

「私は……理不尽だって思うこともあったけど。
 それでも………宗一郎さんに会えて良かったと思ってます。」

 腕の中の宗一郎が震えて、声を殺して泣いているのが分かった。

 そして涙で滲んだ声で、けれどはっきりと言った。

「もうここにはいない方がいい。」

「でも………。」

 回していた腕を解かれて体を押し離された。

「大丈夫。
 桃ちゃんの妹も食べたりしないから。」








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