扉の向こうはいつも雨
 テーブルの上には親戚の者によって事前に用意されたであろう木箱が2つ置かれていた。
 物々しい見た目に緊張感が高まる。

 宗一郎も同じく緊張しているのか硬い表情のまま真っ直ぐ木箱を見つめている。

 そして決意したように一歩前へ出て、木箱の前に腰を下ろした。
 桃香も倣っておずおずと宗一郎の隣へ座った。


 宗一郎が手にしたのは辻本家と流れるような書体で書かれた物。

 静かな部屋に木箱を扱う乾いた音がする。
 そして宗一郎の白く長い指先が歴史のありそうな巻物を取り出した。





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