きみが赤を手離すとき。


だよね。たまには彼女と食べたいだろうし、今頃は日当たりのいい中庭であーんとかされているかもしれない。

よかった。ここから中庭が見えなくて。


バカだな、私は。

別に先輩から優しくされたって勘違いしてないし、自分の身の丈は誰よりも分かってるつもり。

だから先輩の彼女に勝てるなんて思ったこともないし、昼休みに一緒に過ごせるだけで十分だったのだ。

でも、ちょっと贅沢になってた。


早く先輩に会いたくてトマトジュースを全部飲んで、チロルチョコだってどんな味がいいかなって、散々悩んで。

私なんて、理由がなきゃ先輩とふたりにはなれないっていうのに、彼女は理由がなくても先輩を独り占めできる。


こんなに拗(こじ)らせるつもりはなかったんだけどな……。


そう思いながら、コンビニで買ったチョコクロワッサンをひとりで食べる。

甘いパンが、ひどくしょっぱく感じたのは気のせいじゃない。

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