霊界ナビゲーター〜光と闇〜
「夢から覚めても私のことを忘れないで。奈麗」

ユウは奈麗を更にぎゅっと抱きしめた。

「許しておくれ。私は君の傍にずっといるが、私の立場上、今後は看視者として弓愛と等しく、君にも厳しくしなければならない。けれど、たとえ私がどんな態度を見せたとしても君への思いは変わらない。どうかこれだけは忘れないで。」

自分の体が引っ張られる感覚がした。

目を覚まさなければ・・・。

いきなり何故この青年はこんなことを言うのだろう。奈麗は困惑した。

ユウは奈麗の手をぎゅっと握った。

何故この手のぬくもりが温かくて心地よいと思うのだろう・・・。

奈麗の体は次第にすっと消えていった。

「現界に戻ったか・・・・...」

ユウは己の手から感じたぬくもりを愛しむように握りしめた。


突如背後から現れた少女は青年のその腕に抱きついた。


「こっちは嘘をつくのに、苦労したのよ。ユウ。」


ユウは困ったように少女に微笑んだ。



「ごめんね。弓愛。」



ユウは弓愛の頭にポンと触れた。


「あなたと奈麗ちゃんの縁結びをしたこの御礼はしてもらわないと。」



甘えるように腕に絡ませて、ユウの背中に回す。




正面からその綺麗な紫の瞳を真っ直ぐに見上げた。




「何を望む。」




ユウは抵抗する様子もなく相手を見つめた。




感情の動く事の無い笑みが弓愛の瞳にうつった。



「んー、良い事?」




弓愛は右手をユウの頰に伸ばし、優しく触れた。





ユウの背は弓愛よりもすらりと高く、秘めた想いを抱いている表情。




弓愛はユウの顔をこちら側へと引き寄せた。



「私にもその一途で重苦しい愛を向けてくれても良いのにね。」


徐々に弓愛の顔がユウの顔へと近付く。


そして二人の影が重なった。

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