やれば出来る子
目覚め
-- 目覚め --

「...」

「.........むにゃ」

「............ん?!」

鼠が苦手な猫型ロボットの目覚し時計はその短針を,14時を少し過ぎた辺りを指し示している.

やばい,遅刻だ.

そう,今日は13時から丸出駄目商事の入社面接の予定が入っているのである.

起き抜けの頭をフル回転させ,突然のピンチを切り抜ける策を考える.


丸出駄目商事は親が勝手に面接を出願した会社である.

「あのババァ,余計なことしやがって...」

いまの日本において,ストレスを溜めながら我慢に我慢を重ねて社会の歯車になるのはナンセンスであるとわたしは考えている.

人間なんていずれ死んでしまうのだ.


長生きしたところであと余命50年足らずといったところか.

この限られた時間を自分にとって有意義に過ごすことは,至って自然な行為ではないだろうか.

人間向き不向きが存在する.

たまたま,わたしは働くのに向いていない人間だったに過ぎない.

一般に「働く」というのは生活するための種を生産する行為であると考えられる.この場合、差し迫って今日という日に面接へ足を運び生活費を稼ぐために奔走する必要がどれだけあるだろうか.

..
....
......

........いやない.

なぜなら,親はまだ働く身であり,少なくとも今日明日に食に困ることはない.

また,衣類も普段外出は月に1度あるかないか程度であるため必要性は感じていない.

これで衣食住は心配する必要がないことを再確認した.

結論、働いたら負けだ.

それでは,再び夢の世界に旅立とう.....


「アディオス,現実世界.」



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