無題 〜奇跡の7つ子〜
第4幕

11:♣言い伝え♣

マラソン大会も終わり、シュミレーションのことも知って、やっと、七月に入った。



私は、はじめから気になっていたけど、今まで聞かなかったある質問をしてみた。

別に気まずいとかじゃないんだけど…



私は、昼休み、秘鳴と遅鳴、壱鳴、詩鳴と一緒に屋上で、お昼ご飯を食べていた。


もぐもぐしながら、暖かい日差しを浴びながら、食べる。



そしてついに聞いてみた。


「ねぇ、ちょっと質問してもいい?」


「なに?どしたの?」



あったかい日差しを浴びているからなのか、ご飯を食べたあとだからなのか知らないけど、「どしたの?」と言った、詩鳴は、うとうと、と、瞼が閉じようとしていた。



「なんで、制服が黒と白分かれてるの?なんで、黒の人たちを見かけないの?なんで?」


今更だけど、私が学校に来てから、1度も、校舎内で、黒の制服を着た人たちを見ていない。お昼ご飯のときは、購買で見たり、生徒会の三人は、見たことがあるけど…その他は、無い。



「んー。壱鳴…言うの忘れてたの?」


秘鳴は、卵焼きを箸で割りながら言った。


「サーセン。」


笑いながら、壱鳴は、軽く謝った。



「あのね、黒に入るか、白に入るかは、1年生の時の、クラス決めで、決まるの。私たちの時は、123は、白で、456が、黒だったよ。」


「なんかね、昔は、ごく普通の学校だったんだけど、その当時の、生徒会長と副会長が、中割れして、喧嘩になった。」


「二人の喧嘩が、次第に大きくなり、いつしか全校生徒を巻き込んだ。そして、生徒会長側についた、白の人、副会長側についた、黒の人たちも、顔を見るだけで喧嘩になってしまって…」


「校舎を分かれて学校生活を送ることになった。
これが、言い伝え。
そして、不良校では、ないんだけど、“各組、仲良くしては、いけない。”という決まりができたの。ひどい場合は、顔を見ただけで喧嘩になる。これが当たり前なんだけど。」


「分かった?」


黙っていたって真剣に聞いてたけど…

なんか、どうでも良くない?

それは、生徒会長と副会長の喧嘩なんだし、全校生徒を巻き込む意味がわからない。


「うん。ざっと理解したよ。」


私は、少し適当に答えた。


「じゃあ、アリスも、この決まり守ってね?」


「え…」


キーコカンコーンキーンコンカーンコーン


私の声は、予鈴のチャイムでかき消された。




「ほら、教室行くよ。」



秘鳴は、走って行ってしまった。


私も後を追いかける。



なんで、私が、黒の制服の人達を、避けたり、喧嘩したりしなければいけないの?


その日の授業の内容は、全く聞こえなかった。


その夜は、眠れなかった。
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