無題 〜奇跡の7つ子〜

31:♣遅鳴……♣

待って、なんで?私の代わりに?え?え?え?え?

私は、後ろを振り向く。


後ろにいたみんなも、分からないようだった。


ドサッ


遅鳴は、倒れた。


「ち………遅鳴ぁぁ!!」

私は、遅鳴に駆け寄る。


お腹に大きな穴が空いている。

「遅鳴?遅鳴?遅鳴?」

私は、遅鳴に呼びかける。

「ア..リ...ス……」

「遅鳴!!」

私は、遅鳴がまだ生きているのに安心した。

「待ってて、今治すから!」

遅鳴の腹部に、手を当てて祈る。


(治れ!!治れ!!治れ!!治れ!!)


だけど、一向に、治らない。

「へ?なんで?なんで治らんの?ねぇ!!治ってよ!!……」

あ、さっき、使い果たした…

今日は、もう治せない。

死んじゃったら、治せない。

私は、しばらく放心したんだと思う。


「アリス…お前は、俺の家族を守って。」

ゴプッっと、口から、血が出る。

「やだ。自分で守りなさい」

私は、必死に涙をこらえる。

「俺は、もう無理なんだって、」

「やだぁ!!自分で守れよ!!死なないでよ!生きてよ!」

我慢しきれずに、涙が、頬を伝わる。

「子供みたいだな。」

「子供でいいから。死なないで、死んだら、嫌いだ!!」

ふふっと、遅鳴は、笑う。

「嫌いか…僕は、好きだよ。だからさぁ、僕を忘れないでよ。」

遅鳴もホロホロと泣く。

「忘れない!忘れないから、生きて。」

私は、叫ぶ。

涙は、私の頬の上で、揺れる。

「ありが……と……ぅ……」

パタッと、遅鳴の手が落ちた。

「へ?なんで?なんで?????」

遅鳴は、目を閉じている。

「いやぁァァァァァァァァァァ」

私は、泣き叫んだ。

涙が、ボロボロと、遅鳴に落ちる。

涙は、まだ枯れない。









ちぃなが、死んだ。

アリスは、泣き叫ぶ。

ギラッ!

アリスから、何かが出る。

アリスは、泣きながら、何かを叫んでる。

私は、耳を澄ます。


「私の好きな人,私の愛した人,それを殺した人,汚れ多き人は,この世にいては,ならない,罪多き人,私は,彼の為,この身を,こいつに捧げて,こいつの代わりに,消えます……」



「ヒッ…」

悲鳴が少し出る。

怖い怖い怖い。

アリスは、私を睨む……

違う、マッドを睨んでいる。

なぜマッド?


というか、私って、遅鳴を殺したっけ?

殺してない。

だって触手に、血がついていない。

アリスは、分かってるの?

マッドが、殺したってことを。


というか、あれは、もう呪文というよりも、

呪い。

こいつって、誰?

こいつの代わりに消える?

どういう意味?


私が考えている間も、アリスは、泣き続ける。

そして、呪文から、飛び出てきたのは、

黒い手。

ウネウネウネウネ、クネクネクネクネ動いている。

まだ何も動いていない。

どんどん肥大化している。










あーあ。

ついに壊れたか……

好きな人が殺されたのか……

可哀想……

でも、美しいな…

ヘラの方が美しいけど。


このままじゃ、ユピテルも死ぬし、マッドハッターも死ぬ。

みんな死ぬなぁ……


「なぁ、ポセ。助けに行ってもいい?」

「な!お前、今は、大事な会議中だぞ!」

ダァンと、机を、叩く。

「アポ、うるさーい。俺は、ポセに聞いてるの。」

「…いいんじゃないか?俺は、あいつが好きだぞ?」

「だよね。じゃあ、行ってきマース。」








「あいつ!!!ほんとに行きやがった!!」

わなわなしてる。

「いいんじゃない?私たち、あの子のこと好きよ?」

「アフロディーテ!あんな人間のどこがいいんだよ!! 」

「アポロンは、頑固だなぁ。また、今度あいつのとこに来たら、行ってくるといい。俺も行くがな。」

「ポセイドン!…まぁ、気になるから、今度いってみようかな。」

「そう来なければ。」

「それにしても大丈夫かなぁ?ユピちゃん。」
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