立花さん。
立花さんと初めて会ったのは入学式の日。
入学式早々に告白されていたのを見たのが初めてだった。
その時の立花さんも今と変わらず飄々としていて、断り方も氷のように冷たかった。
でもその時はほんとに何も思わなくて、寧ろ調子乗ってんじゃねえやいって思ってた。
それから数ヶ月した時、またも告白シーンを目の当たりにした私。
しかも放課後も放課後、最早もう夜じゃね?って時に、忘れ物を取りにきたタイミングで、だ。
なんかよくバッティングするなあって思って、ちょっとだけ立花さんに興味を持った。
月明かりだけが照らす教室で、彼女は告白を断り終えた後もただ佇んでいて。
光に照らされた彼女の顔は、とても美しかった。まるでこの世のものではないような。
けれど彼女の目から流れる一筋の雫を見た時、ああ、彼女もまた私と同じ人間なんだって再確認した。
それからすごく色々あって色々な立花さんを見て惹かれていき、今に至る。色々省略したけれどもね。おほん。
まあ、こんな風に言っておきながら、私の立花さんに対する気持ちは決して恋愛ではない。
当たり前だ。私達は間違いなく女同士である。私は別に女に興味はない。男が好きだ。
ただちょっとだけ立花さんって存在は特別なだけ。
「あ、ねえ里桜!今日の放課後・・・」
「・・・・・・」
「まあた立花さん見てんのね?」
私の席の前に立ち、話しかけてきた一人の友。篠原 綾花(しのはら あやか)。
中学時代からの親友。いや、世話役?保母さん?まあ、そんなもの。
「そんなに見ても立花さんはあんたには振り向かないでしょうよ」
「うるさいなあ。別に振り向かせたくて見てるわけじゃないし」
振り向かれても困るわ!
「はあ。アンタって奴はほんとにさ、」
呆れた視線を投げかけてくる綾花。
でもそんなものには慣れっこだ。
いつもの事。
「で、なに?なんかのお誘いですかい?」
いつも通り不満気な綾花をスルーして、問いかける。と、綾花は思い出したように肩をピクリとさせた。
「あ、そうそう!駅前にクレープ屋さんが出来たらしいんだけど、一緒に行かない?」
〝私一回そうゆう青春ぽいことしてみたかったのよねえ〟
と。とても楽しそうな表情を浮かべている。多分きっと妄想に入ってるに違いない。
「嫌だ。ラーメン屋なら行くけど」
甘いものは好きじゃない。一口食べれば胸焼けのオンパレード。
だけど、ラーメンとかとんかつとかカレーとか牛丼とか。そうゆうのは大好きで、放課後に焼肉行こうとかの誘いなら一秒のスパンも置かずに賛同するっていうのに。
てか綾花は私が甘いものきらいなの知ってるはずなのになんなんだこの野郎。
「ほんとアンタって可愛げってもんがないわよね。ほんとに女なの?レディなの?」
「愚問中の愚問だわ。どっからどう見ても女だわ」
そもそもね?なにがクレープだ!なにがケーキだ!パフェだ!ふざけんじゃないよ!
日本人たるもの、米だ。白米だ!あんな甘ったるくてふわふわしたもんなんざいらないんだよ!反吐が出ますほんとにまじで。
私の好きなラーメンもとんかつも焼肉も、みんな白米に合うだろう!おばあちゃんが作る煮物も!!いかなごのくぎ煮だって!!!
「米で始まり米に終わる。これこそが日本人だとは思わないかい?」
「思いませんね」
素早い返答ありがとうございます。ええ。