お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
見合いから逃げ出した翌日の月曜日。
昨日の疲れを引きずったまま出社した私は、十七階建ての自社ビルの、二階の廊下を歩いている。
この階に女子更衣室があり、そこで水色のタイトスカートと、チェックのベストという制服に着替えるためだ。
更衣室にたどり着き、ドアを開けながら大あくびをしたら、ちょうど中から出てくるところであった女子社員と鉢合わせる。
大口開けた私の顔が恐ろしかったのか、彼女は「キャッ」と可愛らしい声をあげて驚く。
それから目幅を狭めると、「織部さんでしたか。ごめんなさい」とクスクスと笑った。
なんとなく、嫌味な感じのする笑い方である。
彼女は私のひとつ年上で、美人受付嬢の東条(とうじょう)さんだ。
エントランスの総合案内のカウンターに向かっている時の彼女は、とても人当たりのよい笑顔を浮かべているけれど、なぜか廊下などでばったり私と出くわした時には、こうして棘のある視線を向け、嫌な笑い方をする。
いや、なぜかではない。
彼女は自分のライバルになりそうな女子社員を警戒しているのだ。