お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
私も社内でたまに、美人だと言われる時があるけれど、容姿を自己評価するなら中の上だ。

東条さんの方が何倍も輝いて、男性社員が憧れるマドンナ的存在なのだから、心配しなくていいよと言ってあげたい。


けれども彼女とは挨拶程度の付き合いしかしていないため、「おはようございます。驚かせてすみません」とだけ答えて、私は更衣室の中へ入り、彼女は廊下へと出ていった。


テニスコート一面分はありそうな広い室内は、縦長のスチールロッカーが二十列ほど並び、壁際も同じロッカーで埋められている。

九時の始業前のこの時間、更衣室は大勢の女子社員でごった返しており、あちこちで交わされる会話の声がうるさく、香水や整髪料などの匂いが混ざり合って気持ちのよい空間ではなかった。


私の勤めるこの会社は『ファンベル製菓』。

業界第三位の売り上げを誇る名の知れた企業で、グループの総従業員数は四千人を超えている。

年間売り上げは千五百億円を超え、老舗とは名ばかりで今にも潰れそうな織部茶問屋とは対照的な、勢いのある大企業である。

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