お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
彰人の推測によると、ワインボトルの中は水にすり替えられていたのではないかということだ。

私が電話のために席を立っている間に、店員に頼んでそうしてもらったのだと。


言われてみれば、成田さんを支えて歩いた時、その呼気にアルコール臭を感じなかった。

今は呂律もしっかりしているし、ひとりで立つこともできるようだ。

千鳥足でふらついていたのは、演技だったということなの……?

その狙いは……。


「大方、酔ったふりして帰れない状況を作り、莉子が自分の判断ですぐそこのラブホテルに入るようにと図ったんじゃないのか? クズ野郎が」


彰人の強い非難を込めた説明に、私は納得させられていた。

二次会まではほとんど飲んでいなかったのに、私とふたりになった途端に水を飲むようにワイングラスを煽る彼は、なんだかおかしかった。

アルコールに強いと言ったくせに、急にバッタリとテーブルに突っ伏して、ひとりでは歩くこともできなくなるというのも変だ。

なにか言いたげに私を見ていたマスターは、迷惑な客だと思っていたのではなく、『まんまと騙されて可哀想にと』心の中で呟いていたのだろう。
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