お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
成田さんに対して、非難の気持ちが湧き上がる。

彰人の力強い腕から逃れることはできないが、もがくようにして顔を横に向け、視界に成田さんを捉えれば、私と目が合った彼は気まずそうに目を逸らした。


その反応は、図星ということなのだろう。

騙して、私が自らホテルへと足を向けるような作戦を企てていたのだ。

なんて卑怯なの……。


私と目を合わせられない彼は、「酔いは今さめたんだよ。俺はそんなことをしない」と否定しつつも、動揺に声を震わせていた。

それをごまかそうとしてなのか、「とにかく織部さんは嫌がってるんだから。早く放せ!」と急に声を荒げて、私に向けて腕を伸ばしてくる。


彰人の力が強すぎてもう少し優しく抱きしめてほしいとは思うけど、こうしているのは嫌ではない。

成田さんに捕まることにこそ、嫌悪を感じる。


伸びてくる手を恐れて肩をびくつかせた私だったが、その手は私に触れることなく、彰人によってはたき落とされていた。


彰人が鋭い声で彼を脅す。


「成田。入社一年目の不祥事をもう忘れたのか? あの時に書かせた誓約書は俺の手元にあるぞ。二度と女性社員に手を出さないという約束で、お前はファンベル製菓に残ることができたんだ。それが破られたと思っていいんだな?」
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