お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
きっと彼はもう二度と、こんなことはしないと思う。

一流企業のファンベル製菓は給料もいいから、ここをクビにされるのは嫌だろう。


私は右側の助手席に座り、左側の運転席で彰人がハンドルを握っている。

車種には詳しくない私でも知っている有名なドイツ製で、ボディの色が黒い五人乗りの高級車だ。


運転中の彼は、不機嫌そうにも見える疲れた顔をしているが、私はそれに構わずに「成田さんの一年目の不祥事って、なに?」と気になっていたことを問いかけた。

すると、ため息をついた彼が、「女絡みの不祥事だ」と忌々しげに答える。

その簡単な説明によれば、同期入社の女子社員を言葉巧みに騙して資料室に連れ込み、肉体関係を迫ったという話であった。


「ふーん……」と返事をして、私は考えに沈む。

今まで爽やかで誠実な人かと思っていたけど、それは誓約書に怯えて性的欲求を我慢した結果の、作られた顔であったみたい。

今回は少々お酒が入っていたせいか、私に対して我慢ができずに卑怯な真似をしてしまったようだが、そんな姑息なことをしなければ、私は前向きに交際を検討していたと思うのに。

まぁ、私としては、女性に対して不誠実な人と交際せずにすんだので、これでよかったのかもしれないけれど……。
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